私が平成12年に三浦屋に入社してしばらくして、色々なことに気がつきました。
その中の一つが人事異動です。
驚くことに、当時の三浦屋にとって人事異動は、「左遷」「異動対象者はその職場で不要な(仕事の出来ない)人」ととらえられていました。
私の人事異動に対する価値観とはまったく逆です。
「人事異動を行なうことにより、社員が新しい仕事にチャレンジする機会が与えられ、社員の能力が磨かれる」
「社員の能力が上がれば業績が上がり、結果、会社が潤い、社員の待遇・報酬も改善される」
私は、このように考えます。
業績を伸ばしている会社なら、こういう考え方が常識のはずです。
では何故当時の三浦屋の常識が、業績を伸ばしている会社の常識とかけ離れてしまったのでしょうか?
私は三浦屋を色々な角度から観察して、原因を考えてみました。
色々調べた結果、原因は「営業所ごとの独立採算制の経営」にあることに気付きました。
営業所ごとに月次決算を出し、どこの営業所が儲かったか、儲からなかったかを把握することは良いことです。
しかし、「会社全体がよくならないと社員の待遇がよくならない」という考え方を社員全員にしっかり教育して定着させないと、各営業所、各社員が自分達の都合で仕事をしてしまいます。
黒字の営業所は、儲かっているから良い流れを断ち切りたくないために変化を好みません。
既存の社員で仕事をしたがるようになり、その結果、他の営業所に人材を出したがらないようになります。
赤字の営業所は、黒字に転換したいけれども良い人材を他の職場から転入してくることを期待できません。
赤字だから職場に余裕がなく、結果社員の教育が行き届かず営業所の社員全体の能力が上がりません。
こんな状況ですから、やむを得ずして欠員が出て人事異動で人を補充する場合、営業所内で評価の低い社員が異動対象となり、送りこまれたのでしょう。
当時、ボーナスは営業所の業績に連動していて、営業所毎に平均支給月数が異なっていました。
これでは、業績の良い営業所から業績の悪い営業所へ異動するのは嫌になるのも当然です。
本来経営陣が会社全体の業績向上を考えて人事異動を敢行しないといけないのですが、当時何故行なわなかったかは、今となってはわかりません。
黒字の営業所も、長年変わらない社員同士で仕事をしているとマンネリ化し、社員の能力の向上が停滞します。
社員の能力向上がないと、だんだんライバル会社に追いつき追い越され、業績は悪化していきます。
以前、業績の良かったA営業所は、その後なだらかに業績を下げていき、社員の大半が入れ替わるまで業績が下げ止まることはありませんでした。
それに対し、A営業所が好調の時期に赤字であったB営業所は、社員の定年退職及び自己都合退職で社員の大半(というかほとんど)が入れ替わり、結果、業績が急上昇して黒字になりました。
これらを見ても、定期的な人事異動が有効なのは明らかです。
私は、三浦屋の間違った人事異動の常識を修正すべく、平成14年頃から全社員に、
「人事異動は社員を成長させる」
「人事異動は左遷ではない」
「今後は全社員、定期的に人事異動を行なう」
と訴え続けてきました。
新卒を採用する際には、
「勤務希望地は聞かない」
「5年から10年くらいで異動してもらう」
と言い、了解した人のみを採用してきました。
社員が入れ替わったのと言い続けてきたおかげもあり、「人事異動」に対するアレルギーが薄らいできたことを実感しています。
しかし、現在も一部の人から人事異動に対してアレルギー反応が出ているのも事実です。
①通勤時間が増えるのはちょっと・・・
②家庭の事情で・・・
③転勤はちょっと・・・
④左遷ですか?栄転ですか?
アレルギー反応はだいたいこんな感じでしょうか。これらのアレルギー反応について、私なりの見解を書きます。
①通勤時間が増えるのはちょっと・・・
今のご時世、1時間半位かけて通勤するのは、珍しいor異常なことではありません。
三浦屋は、東京都大田区、神奈川県川崎区、神奈川県綾瀬市の3箇所にしかなく、社員の大半が川崎市民、横浜市民なので、どこの拠点も十分に通勤圏内と考えています。
「社長は徒歩通勤確定だからいいな」と言う意見が出るかもしれませんが、私はオーナー一族のオーナー社長です。会社が自宅の近所にあるのは必然であり、これはどうしようもありません。
②家庭の事情で・・・
これはけっこうデリケートな問題で、頭ごなしに「NO」と言えないのも事実です。
新卒で入社したころは何もしがらみがありませんが、年齢を重ねていくにつれて、だんだんとしがらみが増えていきます。
結婚・子供が誕生・親の高齢化・その他色々あるかと思います。
これらのしがらみに対して、会社が全てに配慮してしまうと人事異動が全く出来なくなってしまいます。
ですから、「家庭の事情」等は、若干の配慮で対応と言うことになります。
若干は、本当にケースバイケースです。
客観的に見て、私が情状酌量の余地があると判断した場合は、配慮することもあるというレベルです。
これは、程度を言葉で表現するのが本当に難しい。
大手企業の中には、全国転勤可能な社員とエリア社員と分けて(給料で差をつけて)対応している会社もあります。
しかし三浦屋のような中小企業の場合、もともと65名前後の人数で経営しているということもあり、転勤させられない社員がそれなりの人数出来てしまうと、業績を上げる経営がし辛くなってしまいます。
情状酌量の余地があると考えられて異動を見送った社員は、それはそれで大変だと思います。
「人事異動」という能力向上の格好の機会を失ったわけですから、他の社員以上に自助努力を行なわないと能力が停滞してしまい、その職場で存在がかすんでしまう恐れがあります。
毎年業績をあげて会社と社員両方潤うように経営をしていくつもりなので、それには全社員の能力向上が必要不可欠となります。
異動を見送った社員も、勿論例外ではないのです。存在がかすんだ社員を放置しておけるほど、余裕はありません。
③転勤はちょっと・・・
東京から九州や、北海道への転勤となるとすればちょっと考えてしまうのもわかります。
しかし、三浦屋の転勤は神奈川県内の転勤か神奈川と東京間です。
しかも、東京都と言っても神奈川県に隣合わせの大田区です。
④左遷ですか?栄転ですか?
これに関しては、価値観を変えてもらうしかありません。
左遷でも栄転でもありません。
人材育成か、会社経営上の都合です。
今後も、人事異動の概念を社員に正しく理解させ、定期的に適材適所で人事異動を行ない、社員の能力を高めて業績向上に努めていく所存です。